ソフトウェア定義車両は、車内通信において高スループットと極小の遅延を必要とします。従来の CAN/LIN 信号マトリクスから広帯域車載 Ethernet への転換には、RPC、センサーテレメトリ配信、決定論的サイクルタイムを処理できる車載ミドルウェアが不可欠です。
従来の車両設計では、センサーや ECU は DBC ファイルで定義された固定周期で未加工の CAN メッセージを流します。信号定義を変更すれば、それを受信するすべての ECU の再コンパイルが必要です。SOA では、車載機能がネットワーク上で検索可能なサービスとして公開されます。アプリケーションはサービス名でセンサーデータを購読し、Franca IDL や protobuf などの厳密なインターフェース定義を通じて型安全に対話します。
SOME/IP はリソース制約のある車載組み込み機器向けに策定され、AUTOSAR Adaptive の中核をなす標準ミドルウェアです。わずか 16 バイトの軽量ヘッダを備え、RPC メソッド呼び出し用の Request/Response、非同期制御用の Fire & Forget、パブリッシュ・サブスクライブ用の Eventgroups という 3 つの通信プリミティブを提供します。付属の SOME/IP-SD は UDP マルチキャストによりサービス公開や購読を動的に処理します。
SOME/IP が制御コマンドに適しているのに対し、自動運転システムはカメラ画像や LiDAR 点群などの膨大なデータを毎秒生成します。OMG が管理する DDS(Data Distribution Service)は、RTPS ワイヤプロトコルに基づくブローカーレスの分散型パブリッシュ・サブスクライブ基盤を提供します。トピックごとに Reliability、Durability(遅延参加ノードへのキャッシュ提供)、Deadline(厳格な時間枠内での配信保証)など極めて細密な QoS 契約を宣言できます。
標準的な商用 Ethernet は非決定論的であり、ネットワーク輻輳による遅延やジッターは機能安全規格(ISO 26262 ASIL D)を満たせません。Time-Sensitive Networking(TSN)は車載スイッチで実装される IEEE 標準群です。IEEE 802.1AS が全 ECU のクロックをサブマイクロ秒単位で高精度同期させ、IEEE 802.1Qbv(Time-Aware Shaper)が時間帯を排他的に分割。ステア・バイ・ワイヤや電子制御ブレーキの重要フレームがバッファ遅延なく骨干網を通過します。